2013-05-20

Java 7 時代の String#split() 事情

Posted on 2013-05-20, 11:49 in

Java 7 になって String#split() の実装が変更されたことに今更ながら気付いたので、Pattern#split() や Java 6 との性能の比較をしてみたメモです。

Java 6 以前の文字列分割処理

古くから Java を触っているエンジニアであればみな当然知っていることだと思いますが、 TSV ファイルを Java のプログラムで読み込んで処理をするときなど、特定のデリミタで区切られた文字列を個々の要素に分割するときは String#split() を利用せず、事前にデリミタに対する java.util.regex.Pattern オブジェクトを生成しておき、そのオブジェクトを使い回す形で Pattern#split() を利用した方が処理効率 (処理時間) がよくなります。

これは、 String#split() の実装が実質的に Pattern.compile(delimiter).split(str) と等価であることによります。つまり String#split() メソッドは、そのメソッドの呼び出し毎に Pattern オブジェクトを生成するため、オブジェクト生成のオーバーヘッド (と GC 発生頻度の増加) によって処理性能が悪化する、ということです。

Java 7 での String#split() 実装

一方で、Java 7 ではこの String#split() に手が加えられ、Java 6 以前と少し事情が異なっています。

public String[] split(String regex, int limit) {
    /* fastpath if the regex is a
     (1)one-char String and this character is not one of the
        RegEx's meta characters ".$|()[{^?*+\\", or
     (2)two-char String and the first char is the backslash and
        the second is not the ascii digit or ascii letter.
     */

上記は Oracle 社の JDK 1.7 src.zip に含まれる String.java より拝借してきた String#split() のメソッド冒頭のコメントです。

この英語をざっくり翻訳すると『指定された正規表現が次の 2 つのどちらか

  • 1 文字で構成されていて、正規表現におけるメタ文字 ".$|()[{^?*+\\" のいずれでもない
  • 2 文字で構成されていて 1 文字目がバックスラッシュ、2 文字目が 英数字以外 である

に合致する場合に、より手短に済む処理をする』となります。

これはつまり「実質的に特定 1 文字の正規表現として取り扱える場合は、(Pattern#split()) より高速な文字列分割処理できる」ことを意味しています。事実、上記コメント以降の String#split() 実装を見てもらえるとわかりますが、 Pattern オブジェクトを生成することなく、 String#indexOf() を用いた単純な文字探索ベースでの文字列分割を実現しています。

ところで Java エンジニアとしては、この Java 7 での変更により、どの程度性能に影響が現れるのかが気になるところです。そういうわけで、

  • Java 6 での String#split()Pattern#split()
  • Java 7 での String#split()Pattern#split()

それぞれの処理性能を比較してみることにしました。

文字列分割処理の性能比較

性能比較は こちらのデモプログラム を用いて実施しました。

結果は こちらの Google ドキュメント にまとめました。

結果を見ると明らかですが、Java 7 で特定の 1 文字を現す正規表現 (" ") を指定した場合は String#split() の方が Pattern#split() よりも 2 倍以上速くなっています。一方で、複数種類の文字に一致する正規表現 ("\s") を指定した場合は、Java 6 と同じ傾向になっていることがわかります。

Google ドキュメントには正規表現を複雑にしたときの性能比較と、ガベージコレクションの発生回数も参考までに掲載しておきました。この結果より、

  • Java 6 → Java 7 では、 Pattern クラスの各種処理性能が若干劣化している?
  • 正規表現を複雑にすると String#split() 側の性能が劣化する (= Pattern.compile() の処理のオーバーヘッドが効いてくる)
  • 選択の正規表現は (Pattern.compile() もそうだけど) マッチング処理がとにかく重い

ということが窺えますね。

まとめ

今回のまとめは以下のとおり。

  • Java 7 以降なら、TSV ファイルの 1 行を分割するなど、特定の 1 文字で構成されたデリミタを指定するときは迷わず String#split() しよう
  • Java 6、もしくは複数文字や複雑な正規表現で分割したい場合は、 Pattern オブジェクトを事前に定数的に生成しておき、使いまわして Pattern#split() しよう

0 コメント:

コメントを投稿